こんにちは、暦の上では春が近づいているはずですが、私の三半規管は真冬の嵐に見舞われております。SKOOTAGAMESのネゴラブチーム所属、モブです。 さて、2026年最初のビッグイベントの一つ「Steam Next Fest」が幕を閉じましたが、皆さんはどういったゲームが印象に残りましたでしょうか? 膨大な数の体験版がひしめく中で、今回私のタイムラインを最も騒がせていたワードは、間違いなく「FPS」でした。それも90年代のレトロな手触りを持つ「ブーマーシューター(Boomer Shooter)」というジャンル。皆さん、自らのXのタイムラインなどで見覚えはないでしょうか? これは単なる私の体感や偏りではありません。実際のデータを紐解いてみると、今回のNext Festで「最もプレイされたデモTop 50」のうち、なんと7タイトルがFPSジャンルでした。Steam全体におけるFPSゲームのリリース割合はここ数年3.3%前後で横ばいであることを考えると、今回の「Top 50内におけるFPSシェア6.8%」という数字は、通常の2倍以上の関心と熱量がこのジャンルに集中していることを証明しています。 もちろん、普段データに触れてないユーザーでもSNSを通してFPSジャンルのインディゲームを見かけた方も多いのではないでしょうか。例えば去年切り抜きや画面のスクショで海外のゲームユーザーに反響を呼んだdoekuramoriさんの『Beyond Citadel』や、つい最近独特な世界観と体を見下ろせる視点で話題を呼んだ我慢さんの『MISHA』など、割と多くのFPS作品が日本を超えて全世界的に注目を浴びているようにも見えます。 上記の例だけ見るとビジュアルばかりが注目されているように思われるかもしれないですが、そのゲーム性においても「撃って避ける」という原初的かつ分かりやすい快感や、開発者の剥き出しの個性が、今のゲーマーたちの心に深く刺さっているのではないかと思われます。それ故にインディーゲーム界隈において、FPSがちょっとしたルネサンス(復興)の様相を呈していると言っても過言ではないかと。 そこで今回は、SNSでよく見かけて「一体どんなゲームなんだろう?」と気になって仕方がなかったFPS作品で、かつ今回のNext Fesに参加していた3つの作品をレビューしてみたいと思います。ちなみに私は3Dのアクションゲームにすごく弱く(よく3D酔いをするのです)、今回のレビューを書くために胃袋と平衡感覚を捧げざるを得ませんでした。もし皆さんの中に同じく3Dゲームに弱い方がいらっしゃるなら、今回はぜひ気軽な状態でお読みいただけるとうれしいです。 同じ「撃つ」という行為でありながら、全く異なる快感を持った作品たちを、比較用の独自パラメーターと共にご紹介します。 最終回収SQUAD|絶望の淵で見つける、確かな「重み」 本作は、独特なグラフィックと強烈な色彩感覚で、SNS上でもひときわ目を引いていた作品です。ビジュアルのインパクトだけで言えば、今回取り上げる3つのゲームの中でも随一と言っても過言ではありません。 銃器を扱う繊細なアニメーションの向こう側に広がる、巨大なビル群の森。そして、その高層ビルをあざ笑うかのように、遥か彼方から近づいてくる巨大な敵たち。遠くで黒い点にしか見えなかった敵が、いつの間にか目の前まで迫り、その巨大な威容を現した時の感覚は、まさに「圧倒される」感じでした。実際にプレイして感じたのは、この「圧倒される感覚」こそが、おそらく製作者が意図されたものだということです。 本作の舞台は、すでに人類が滅亡した後の世界。地球を侵略したエイリアンによって、人類はすでに敗北している状態です。主人公を含めた登場人物たちは人間ではなく、わずかに残された「群体兵器」です。彼女たちは少女の姿をしながら、人類の遺産である特殊兵器を回収し、巨大な敵に立ち向います。すでに滅びてしまった地球のために、残された資産が最後まで抗い続ける……。その設定はどこか壮絶でありながら、同時に敵に対する圧倒的な無力感をも示唆しており、私がSNSを通して感じた「圧倒される気分」とはこれを示していたのかもしれません。 FPSとしての爽快感を求めて本作に触れたユーザーは、予想以上に重苦しく、深い世界観に驚くかもしれません。特に象徴的だったのは、作中で偶然発見する一匹の「犬」とのエピソードでした。 設定上、私たちが操作する兵器の全高は12メートル。犬は指の節ほどのサイズしかありません。そんな小さな命を保護し、「人類は滅びたけれど、ワンちゃんは守れた」と喜ぶ彼女たちの姿は、愛らしくもどこか切なく感じられました。見た目は同じ兵器でありながら、一人ひとりに異なる性格や個性があることを知った時は、この暗い世界観の中に灯る小さな光を見つけたようで、無性に嬉しい気持ちになりましたね。 ゲーム性において触れておきたい点は、周囲の「コンクリートジャングル」が単なる背景ではないという点でした。巨大なビル群は、敵を攻撃する際の障害物にもなれば、敵の猛攻をしのぐための貴重な遮蔽物にもなれます。「とにかく撃ちまくって無双する」というプレイは、本作では通用しません。周囲の環境、敵の数、 そして手持ちのリソースを常に考慮し、冷静に判断を下す必要があります。むしろ、闇雲に乱射することは自分を不利な状況に追い込むことにも繋がります。この「判断の重み」があるからこそ、アクションゲームとしての手応えがより確かなものになっている気がしました。 ダークな雰囲気ゆえに好みは分かれるかもしれませんが、この世界観の深さは、製品版への期待を抱かせるに十分なものでした。もしこのレビューを読んでこの絶望の先に何があるか気になった方がいたら、今のうちにSteamのウィッシュリストをチェックするのも良いでしょう。アクションとゲーム性、そして世界観のバランスが絶秒だった今回の期待作『最終回収SQUAD』でした。 📊 [モブの体感パラメーター] 世界観の深さ: ★★★★★戦略性: ★★★★☆爽快感: ★★★☆☆3D酔い度: ★★★☆☆(一定時間超えるとグッと来る)一言: 絶望的な世界観と、重みのある戦略的FPSの美しい融合。 ギャルトムラ|全肯定の優しさに包まれる、カオスな異色作 続いてご紹介するのは、こちらもSNSで凄まじいインパクトを放っていた作品『ギャルトムラ』です。前述の『最終回収SQUAD』が期待以上の「深み」を見せてくれる作品だったとすれば、本作は「FPSというジャンルでこんなものに出会うとは……」という、ある種の衝撃と困惑を突きつけてくる、非常にエネルギッシュな作品でした。 まず驚かされたのは、独特なタイトル画面です。画面全体が黒く、白いピクセルテキストで埋め尽くされた構成は、どこかストイックでありながら、驚くほど「機能」に忠実です。左上にはタイトル、その下には言語設定。中央にはスタートボタン。そして極めつけは、右上に配置された「タイトルソングのMV再生パネル」です。一つの画面にすべての情報が凝縮されたその「圧縮陳列」のような佇まいに、プレイ前から並々ならぬ気配を感じずにはいられませんでした。 その「非凡さ」はチュートリアルでも遺憾なく発揮されます。本作はオーソドックスなFPSの操作感を持ちつつも、チュートリアルの選択肢に「普通のチュートリアル」と「大げさなチュートリアル」の二種類が用意されています。 ちなみに後者を選ぶと、指示に従ってキーを押すたびに「えらい!!」という力強いSEと歓声が響き渡ります。「ユーザーを褒める」というゲーム制作の基本原則をこれほどストレートに体現したケースを、私は他に知りません。 さらに驚くべきは、本作が体験版にして「フルボイス」であるという点です。チュートリアルが終わり本ステージが始まると、主人公のギャルと彼女と無線で会話するオペレーターはもちろん、なんと敵のボスキャラクターに至るまで声が吹き込まれておりました。インディーゲーム開発において、ボイスの実装がいかに困難で労力を要するものかを知る身としては、この物量には敬意を表さざるを得ませんでした。(そもそも、どうやって取ったんですか??) ゲーム性に目を向けると、本作はあえて「制約」を設けることで独自のプレイフィールを生み出しています。その最たるものが「ジャンプができない」という点。近年のFPSでは当たり前の縦の機動を封じる代わりに、本作は高速な移動力とレーダーによる情報収集を軸とした、平面的な立ち回りをベースにします。障害物を飛び越えるのではなく、いかに有利な射線と死角を確保するか。そのシンプルかつ戦略的な駆け引きは、古き良きFPSの魂を感じさせるものです。 また、近接武器として「包丁」を振るえる点も面白い要素です。低難易度では敵を一撃で屠るほどの威力を持っており、慣れてくれば包丁一本で戦場を無双する快感を味わうこともできます。プレイヤーの熟練度に応じて異なる選択肢を選ぶことができるため、見た目の奇抜さに隠れた確かな「ゲームとしての面白さ」がそこにありました。この予測不能な体験をぜひ味わってみたい方は、Steamのストアページを覗いてみてはいかがでしょうか。 独特な個性を光らせながらFPSとしてちゃんとした手ごたえのある一作『ギャルトムラ』でした。 📊 [モブの体感パラメーター] 独自性(カオス度): ★★★★★テンション: ★★★★★爽快感: ★★★★☆3D酔い度: ★★☆☆☆(平面移動がメインのため症状は少なめ)一言: 制約が生み出す新しい駆け引きと、プレイヤーを包み込む圧倒的な熱量。
海を渡った『ももっとクラッシュ』、台湾の“太もも”熱狂記 ― G-EIGHT 2025 参加レポート
こんにちは、SKOOTAGAMESのネゴラブチームに所属しております、モブです。 日本はすっかり冬の寒さに包まれている頃かと思いますが、私は少し前まで、海を渡った南の島、台湾にいました。12月だというのにコートがいらないほどの暖かさ。しかし、それ以上に私を驚かせたのは、現地のユーザーたちが放つ、季節外れの真夏のような“熱気”でした。 今回は、12月12日から14日にかけて台北で開催されたインディーゲームの祭典「G-EIGHT」に、我々SKOOTA GAMESが出展者として参加した際の記録をお届けします。 我々が持ち込んだのは、日本国内のイベントでも(主にその設定で)話題を呼んだ『ももっとクラッシュ』。「太ももで敵を挟んで浄化する」という、文字にすると少々…いや、かなり衝撃的なコンセプトを持つリズムアクションゲームです。 果たして、この日本独特の(?)ユニークさが、海を越えた台湾の地でどのように受け入れられたのか。日本とは少し違う、台湾ユーザーの驚くべき反応と熱量について、レポートしていきたいと思います。 「恥ずかしさ」を「好奇心」が超える瞬間 まず、正直にいいましょう。日本で展示を行う際、この「太ももで挟む」というビジュアルや設定に対して、多くのユーザーは少し恥ずかしがったり、遠巻きに見守ったりする反応が一般的でした。それはある意味、地域や年齢による慎ましさとも言えるかもですが。 しかしながらこのようなユーザーの反応に顔をそむけることはしません。むしろ今回、私たちはあえて“太もも”を隠すことなく、ブースに42インチの巨大モニターを設置し、プレイ映像を堂々と流すことにしました。完全アウェイの地で、我々の誇るべき“太もも”の姿を一人でもより多く届けたかったからです。 結果は、予想以上のものでした。通りがかった台湾のユーザーたちは、巨大モニターに映るシュールな光景を見て、最初はやはり笑ったり驚いたりしてくれていました。ですが、普段と決定的に違ったのは、その「このゲーム面白そう」の笑いが即座に「気になるからプレイしてもよう」の行動にと繋がったわけです。 「太ももでこんなことをするなんて!」という指摘要素より「なんだこれは?」という好奇心が先を走り、恥ずかしがる暇もなくコントローラーを握る。そしてひとたびプレイすれば、そのアクションの手触りに没頭してくれる。さらにプレイしたユーザーのほとんどは、その場で自然にSteamアプリを開き、ウィッシュリストに登録してくれていました。「面白かった=即登録」という、この直感的な行動力には、開発者として本当に救われる思いでした。 言葉の壁は“太もも”で越えられる 我々にとって最大の懸念だった「言語の壁」も、意外な形で乗り越えることができました。 中国語が全く話せない私たちが、このゲームの「太ももで挟む」というニュアンスをどう伝えたか。それはもう、身振り手振り…いえ、「太もも振り」でした(笑)。 言葉で説明するよりも早く、私たちスタッフが自らの太ももを動かして「こうやって挟むんだよ!」「キュートでファニーなリズムゲームなんだ!」と体で表現する。すると、ユーザーもすぐにその意図を理解し、笑って頷いてくれるのです。ゲーム自体はキーボードやコントローラーで遊ぶ一般的なPCゲームですが、そのコンセプトを伝えるためのパフォーマンスが、言葉以上のコミュニケーションツールとなりました。 「これ面白いからやってみなよ!」:シェアする文化の健全さ また、会場で特に印象的だったのが、台湾ユーザーの「シェア文化」です。 一人で試遊を楽しんだユーザーが、しばらくすると友人を連れて戻ってくる。「これ、すごく面白かったからお前もやってみなよ!」と、まるで自分のことのように友人に勧める。すると友人がプレイして笑っている姿を見て、自分もまた楽しそうに笑う。 普段のイベントでは「一人でじっくり楽しむ」ことが多いのに対し、台湾では「面白い体験を周りと共有し、一緒に楽しむ」という意識が非常に強いように感じました。 それを裏付けるように、プレイ後の感想を付箋に書いてもらうようお願いしたところ、なんと10人中7人という高い割合で、快くメッセージを残してくれました。好きなものを好きだと表現する、面白いものを周りに広める。この台湾ユーザーのとある意味ストレートで「健全」な熱量が、会場全体のポジティブな空気を作っているのだと実感しました。 祭りのあと、そして“私の魂”も挟まれる…!? 初めての台湾出展は、単なる海外進出以上の意味を持つものでした。「太もも」という際どいテーマであっても、そこに確かな面白さと熱意があれば、国境も言葉も関係なく受け入れられる。台湾のユーザーたちが教えてくれた、「好き」を隠さず表現する情熱。その熱を『ももっとクラッシュ』に込め、これからは日本、そして世界中のプレイヤーへと届けていきたいと思います。 さて、そんな熱気に後押しされ、我々SKOOTAGAMESも重大な決断をいたしました。 現在Steamで開催中のウィンターセールに合わせ、『ももっとクラッシュ』も大型アップデートを敢行! さらに、季節感を全力で無視した台湾とは裏腹に、こちらはしっかりと冬を楽しむ「クリスマス衣装DLC」も発売いたしました。 ですが、今回のアップデートの目玉は衣装だけではありません。なんと、「太ももに挟まれて浄化される魂のボイス」が新たに追加されたのです! 追加されたボイスは全8種類。…そして、ここで皆様に懺悔しなければならないことがあります。実はその8つの魂の中に、あろうことか私、モブの声が一つ混ざっております。 ご覧ください、この収録スタジオでの悲壮感あふれる写真を。 「いや、そこでもっと喜びを覚える感じで!」という繊細なディレクションを受けながら、私の魂(と声帯)は完全に太ももに捧げられました。まさかゲーム開発を始めて、自分の絶叫が世界中のプレイヤーの太ももに挟まれる未来が来るとは、夢にも思いませんでした…。 どの声が私のものなのか、それはプレイしてのお楽しみということで(笑)。ぜひSteamで『ももっとクラッシュ』をチェックして、台湾の熱気と、私の魂の叫びを感じてみてください。 それでは、また次回のレポートでお会いしましょう! メリー・フトモモ・クリスマス!
まだまだ広がるインディーゲームの世界 〜ゲームパビリオンjp 2025レポート〜【下編】
こんにちは、モブです。次回に続いてゲームパビリオンjp 2025レポートの第三回、最終回をお届けします。これまで「独特な雰囲気を醸し出すミニマルなインディーゲーム」、「独特なコンセプトで武装した、一方で闇を感じるインディーゲーム」と題して様々な作品を紹介してきましたが、今回は「デザインと操作感に心血を注いだインディーゲーム」に焦点を当てます。 「インディーゲーム=粗削りで小規模」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、今回紹介する三つのタイトルは、そんな固定観念を見事に打ち破る作品ばかりです。少人数の開発チーム、時には一人の開発者が、大手スタジオにも引けを取らない洗練されたデザインと気持ちの良い操作感を実現している姿に、正直なところ私自身が一番驚かされました。 大阪という新たな土地で出会ったこれらのゲームは、読者の方々にもインディーシーンの底力と可能性を改めて感じさせてくれるでしょう。それでは早速、三つの傑作をご紹介します。 Tournamentris:トーナメント表と落ちものの革新的融合 続いて紹介するのは『Tournamentris』です。トーナメント表と落ちものというユニークな要素を組み合わせた、新感覚のパズルゲームでした。言葉だけで説明するのは難しいのですが、一度プレイすればどれほど斬新で独特なシステムなのかが一目で分かります。 私の説明力が許す限りで紹介すると、基本的にテトリスのような構造をしていて、下にはサイコロのように点の数が異なるブロックがランダムに並んでいます。プレイヤーはその上にテトリスのように何かを落とすことができるのですが、落とせるオブジェクトには主に二種類がありました。 一つ目は「ピース」。一見すると柵のように見えるこれは、床にあるブロックとブロックを繋ぐ役割を果たします。この時注意すべきなのは、同じ点の数を持つブロック同士しか繋げられないということです。つまり、点が一つあるブロックは同じく点が一つあるブロックにしか繋げられず、点が三つのブロックは同様に点が三つのブロックとしか繋げられないのです。 このように繋がれたブロック間のピースの上に、もう一つのオブジェクト「クラウン(王冠)」を乗せることができるようになります。クラウンが乗ったピースとそれによって繋がれたブロックは、より大きな数の一つのブロックに変わるという仕組みです。 参考までに言葉を添えますと、点が一つの二つのブロックを合わせると点が二つのブロック一つになり、点が三つの二つのブロックを合わせると点が一つのブロック一つに戻るという、より複雑な構造も存在します。その他にも、あるピースの上に同じサイズのピースを乗せると消えてしまうなど、思いのほか気を配るべき要素が多いゲームでした。 最初から難しそうだったので意図的にイージーモードを選びましたが、それでもかなり苦戦しました。一見すると意外とシンプルのように思えますが、数字の大きさや変化するサイズ、ピースの大きさなど、考慮すべきことが山ほどあったからです。それにもかかわらず、もう少しシステムに慣れれば夢中になって没頭できそうな、そんな中毒性を感じました。もしイベントでプレイできなかった方も、現在Unityroomで遊べるので、一度参考にしてみるといいでしょう。 今まで述べたようにゲーム性が目立つ作品ではありましたが、個人的に最も印象的だったのは全体的なデザインです。UIデザインからチュートリアルの案内まで、細部にわたる洗練さが際立つデザインでした。特に、最初にゲームシステムを理解する上で最大のハードルとなりがちなパズルゲームだけに、チュートリアルの案内がウェブゲームとは思えないほど親切でスマートな方式だったのが印象的でした。 ユーザーに一定のルールの理解を求めるパズルゲームだからこそ、分かりやすく伝えることは選択肢というよりも必須だったのではないでしょうか。そういう意味で、できるだけ多くのユーザーがゲームを快適に楽しめるようにという制作者の心遣いと配慮が、このデザインで表れたのではないかと感じました。 このゲームを制作したStudio ZeFは、ZeFというお名前のインディーゲームクリエイターさんを中心とした3人組のチームだそうです。様々なゲームイベントを回りながら、短いスパンでパズルゲームを作るインディー開発チームをいくつも見てきましたが、これほど練られたシステムと洗練されたUIをウェブゲームとして作りこめた例は珍しいと思います。今回のイベントを通じて「やはりインディーゲームの世界は広いな」と実感させてくれた、そんな一本だと自信を持って言えます。 Thunder of the DEMONKING:洗練された悪魔の雷撃 今回プレイしたゲームの中で、最も完成度が高いと感じたのが『Thunder of the DEMONKING』です。「これ、もう売り出してもいいのでは?」と思わせるほどの出来栄えでした。ジャンルはアクションタワーディフェンスで、シンプルにマウス一つで操作できる手軽さが特徴的です。 世界観の説明をすると、ようやく復活した魔王である主人公が、自分を倒そうと押し寄せてくる王国軍を相手に雷を落として撃退するという、なかなかシンプルな内容です。ただ、主人公はちょうど復活したばかりがゆえに力が弱いため、途中途中でパワーアップしながらだんだん強い敵を倒していくことになります。操作もシンプル、説明もシンプル。まさに「シンプル・イズ・ザ・ベスト」を体現するカジュアルゲームでした。 実際にプレイしてみると、説明と実体験に大きなギャップを感じない作りに。ある意味では説明だけで完結すると言いますか、追加の言葉を付け加えなくても理解できるという点では、誰でも楽しめるゲームだと言えるでしょう。 基本的に大勢で押し寄せるミント色の兵士たち、少し速いスピードで突進してくる赤色のエリート兵、そして巨大な体と体力を誇るオレンジ色の兵士など、様々な敵が現れます。プレイヤーは単純なクリックで小さな雷を素早く連続で落とすこともできますが、チャージして大きな雷を落とすのも可能なため、周囲の状況に合わせて柔軟に対応する必要がありました。 時間がたつにつれて敵の数と体力が上がることになります。エリート兵の場合は小さな雷にダメージを受けないこともあるため、その場その場の状況判断が重要になります。何より、途中のレベルアップの報酬として現れる能力値向上オプションも、攻撃力、チャージ速度、必殺技使用回数などを提供するため、選択肢はさらに広がることに。シンプルな要素で極めたゲームシステムを提供すること。そういう意味で、このゲームはすでに「完成」しているように感じられます。 しかしそれ以上、このゲームに衝撃を受けたのはそのディテールの部分です。押し寄せる兵士の動きからサウンド、エフェクトに至るまで、このゲームは溢れることも足りないこともない絶妙なバランスを示していました。 まず兵士から話をすると、小さくシンプルなデザインの兵士ですが、それぞれの特性によってはっきりと区別される形とデザインまで。群れで押し寄せてくることで画面と区別がつかないとか、識別が難しいということはありませんでした。何より、ゲーム中に現れる箱を壊すとバナナが出てくるのですが、このバナナを見て喜んで両手でむしゃむしゃ食べるというギミックもとにかく大好き。その他にも、標識を壊すと障害物に変わり、兵士たちの前進を一定時間阻止できるのですが、それを越えるために足で踏みつける小さなアニメーションも丁寧だと感じました。 また、サウンドも秀逸です。当時のブースではネックスピーカー(首にかける輪の形のスピーカー)を使用していましたが、四方から聞こえる兵士たちの可愛らしい雄叫びと、タワーディフェンスというジャンルがマッチして良いシナジーを生み出していました。ゲーム内のBGMと効果音のバランスも絶妙でした。(絶妙いい過ぎてますかね?)どれ一つ欠点を指摘できない、ウェルメイドなカジュアルゲームでした。 個人的にこのゲームの最も優れた点は、うじゃうじゃと押し寄せる敵をテンポ良く、かつ気持ち良く表現している点にあると思います。このバランスというのは本当に難しく、ともすれば鬱陶しかったり不快に感じたりする部分ではないかと。そういう意味で、これほどの快適さと気持ち良さを実現したことには学ぶべき点が多いと感じました。そして、そのような話を制作者に直接伝えることができたので、何より嬉しく思います。以上、リリースが最も期待される作品、『Thunder of the DEMONKING』でした。 レッツカチコミ!!おのかちゃん:未来の「カップヘッド」となる可能性を秘めた一人開発の傑作 このゲームについては特に期待していただいて構いません。なんと、将来の日本版「カップヘッド」になり得るゲームだと思うからです。発表から5年もの時間をかけ、独特のグラフィックで多くの注目を集めた伝説的ゲーム「カップヘッド」をインディーゲームイベントで言及するとは。今回書いた記事の中で最もアイロニな点かもしれません。ただ、それほどまでに、このゲームは次元の異なる繊細なアニメーションと快適な操作感で武装した2Dアクションゲームだということだけは伝えておきたいです。 このゲームをプレイしたのはわずか5分にも満たなかったでしょう。イベント会場に設置された木製アーケードゲームボックスに興味を持って訪れました。約1分ほどの簡単な操作を説明するチュートリアルを経ると、イベント用に作成したと思われるステージを一つ体験できました。 操作もシンプルです。敵の攻撃が当たらないように動きつつ、敵を足で踏んだり、体でタックルをかけて攻撃する。子供たちも多くプレイしているのを通りがかりによく見かけるほど、誰でも楽しめる大衆的なプレイ体験でした。一度プレイした後の私の感想も「どんなインディーゲーム制作会社がこのレベルのゲームを出せるのだろう?」というものでした。しかし聞いてください。なんと、このゲームを作ったのがたった一人のインディーゲームクリエイターらしいです。 2Dアクションゲームは見方によれば、ゲームイベントをはじめ、Steamなどのオンラインストアでも最も多く見られる大衆的なゲームジャンルです。そういう意味では最も多くのライバル作品と向き合うことになるジャンルでもあり、ゆえにユーザーはゲームに対してより特別なものを求めがちなのです。 その点でこのゲームは、特に目立つ点がなく、何の違和感も感じさせない「よく作られたゲーム」でした。ただし、たった一人で作ったという点だけが、そのすべてのプレイ体験に違和感を覚えさせるほど、レベルが高かった点を除けば。 まず操作感について話してみると、非常に軽快かつ気持ちの良い操作感を目標にしたというのは十分に感じられました。敵を踏んだりタックルをした時に飛んでいく様子がスマブラ特有の演出を思い起こさせるほどでした。多くのメジャーゲームをプレイしてきた一般ユーザーには大して響かないかもしれませんが、ゲームを制作した経験があったり、インディーゲームに結構触れてきたユーザーの立場からすれば、これがどれほど凄いことなのかが分かるでしょう。あるいは単に私が大げさに言っているだけなのかもしれませんが。 しかし否定できないのは、このゲーム内のアニメーションが確かに一人制作のレベルをはるかに超えていたということ。先ほど「カップヘッド」を連想したのも、このようなアニメーションのレベルに基づいていました。 偶然にもゲーム制作会社が並ぶエリアで出会ったゲームだったので、当然何かの制作会社の作品だと思っていた私でしたが、意外なことに制作者は一人のクリエイター。信じられなかったので何度も尋ねましたが、なんと3年前にこのゲームを制作し始め、今後5年後に正式にリリースする予定だというお話しを聞けました。もちろん、今年Steamでデモを公開するという事実も伝えておきたます。 昨年から仕事を含め、個人的にも数多くのインディーゲームに触れてきた私からすると、インディーゲームで「自然さ」を感じることは何よりも重要な部分だということ。どこか感じる違和感や拙い部分が魅力として作用することもインディーゲームの良いところですが、それを超えてどれだけの完璧さを追求できるかもまた、インディーゲームこそがより評価される部分だと思うのです。 その意味で『レッツカチコミ!!おのかちゃん』が一人制作でこのレベルのクオリティを生み出したというのは、インディーゲームの今後示す多くの可能性に関しても示唆するところが大きいと感じますが、そう考えるのは私だけでしょうか?いずれにせよ、5年後が楽しみになるインディーゲームタイトルであることは間違いないです。 インディーゲームの可能性は無限大 今回紹介した『Tournamentris』『Thunder of the DEMONKING』『レッツカチコミ!!おのかちゃん』、この三つのゲームに共通するのは、その驚くべき完成度と洗練されたデザイン性です。いずれも少人数、あるいは一人の開発者が手掛けたとは思えないほどの品質に、改めてインディーゲーム開発の可能性を感じずにはいられませんでした。
